2023/03/1
研究成果をNeuroscience Research誌に発表しました。
TDP-43の細胞質移行と凝集体形成は、ALS/FTLDの特徴的な病理像ですが、凝集体がもつ病的意義は不明確です。そこで今回、Synapsin 1プロモーターを用いて神経細胞特異的に、低い発現レベル(内因性以下)で、核移行シグナルに変異を加え細胞質に異所局在するhuman TDP-43を発現するマウス(Cyto-TDP)と、さらにRNA結合ドメインに変異を加え細胞質内凝集体を形成するマウス(Cyto-aggTDP)を作製しました。両者は脊髄運動ニューロン喪失や運動症状は認めませんでしたが、大脳皮質でグリオーシスをきたし、同等の前頭側頭型認知症(FTD)様の行動障害を呈しました。FTD発症には細胞質に異所局在したTDP-43が重要なのかもしれません。但しCyto-aggTDPの発現量は相対的に低いにも関わらず同等の表現型を示した点や、大脳皮質の一部で神経細胞の軽度減少がみられ、腰髄でミクログリオーシスを認めるなど、病理所見の増悪が見られた点は、凝集体の神経細胞毒性の可能性を示唆します。凝集体の病的意義の有無をさらに明らかにしていく事で、治療開発につながると期待されます。
Wada H, Hikiami R, Kusui M, Minamiyama S, Asada-Utsugi M, Shodai A, Muramatsu SI, Morimura T, Urushitani M. In vivo analysis of aggregation propensity of low levels of mislocalized TDP-43 on cytopathological and behavioral phenotype of ALS/FTLD. Neurosci Res. 2023 Feb 16:S0168-0102(23)00040-8. doi: 10.1016/j.neures.2023.02.006. Epub ahead of print. PMID: 36804599.